やさしい耳鼻咽喉科講座

中耳真珠腫

真珠腫とは

中耳炎には、「中耳真珠腫」と呼ばれる特殊な型の中耳炎があります。名称に「真珠」が付いている理由は、病変をきたした鼓膜付近の上皮が層状に蓄積する姿が時に真珠のように白く光沢のある球状を呈するためです。

100年以上も前からその存在が知られていますが、原因は未だ不明です。

「真珠腫」という名前とは裏腹に、この中耳炎は非常にやっかいです。「真珠腫」が周りの骨を溶かして成長を続けるからです。周りには、音を伝えるために重要な働きをする耳小骨や内耳、顔面神経、さらには脳も近くにあります。

軽度の状態での症状は、難聴、臭いを伴う耳だれなどですが、進行するとめまい、顔面神経麻痺、脳膿瘍や髄膜炎をおこしてしまいます。

診断

「中耳真珠腫」の診断は、ほとんどの場合鼓膜を観察するだけでつきます。真珠腫の塊が観察された場合はそれを取って病理組織検査をおこなうことがあります。耳だれがあれば細菌検査をおこないます。また、単純レントゲンやCTスキャンをとり、病変の拡がりを調べます。

治療

治療は、基本的には手術による真珠腫の摘出が唯一の方法です。手術をしても取り残しがあれば再発してしまうため、進行した真珠腫などに対しては二段階に分けて手術をする場合があります(段階的鼓室形成術)。

手術となれば数週間の入院が必要ですし、手術後も長年にわたり再発がないかどうかなどのチェックを続けることが大事で、根気強く病気と付き合っていく必要があります。

また手術にあたっては真珠腫を取り除いたあと音の伝わる経路を作り直しますが、必ずしも聴力が改善される、あるいは保たれるとはいえません。逆に手術成功のために聴力を犠牲にせざるを得ないケースもみられます。

一方手術を決めるまでの外来レベルでは、真珠腫の塊をできる限り取り除くようにします(この処置の際に一時的にめまいが起こることがあります)。
耳だれに対しては、細菌検査の結果を参考にしつつ有効な薬を選んで用います。以上のような処置により、病変部を乾いた状態にして病気の進行をゆるめるようにします。

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